私は常々、『ニューヨークータイムズ』日曜版「スタイル」面の「街角」写真コーナーに登場するってどんな気持ちなんだろうと考えている。写真を撮るのは、同紙のこの道三〇年のベテランで、ファッション史家兼学者兼ジャーナリストのビルーカニンガム。街角でリアルな人々の最新ファッショントレンドをとらえることが彼の仕事だ。お洒落大好き人開たちが、昼休みにサックスーフィフスーアヴェニューへ向かうところや、露店の前で物色しているところ、同僚とビストロを賑わしているところなどのスナップ写真が撮影される。被写体には無名の人もいれば、イヅアナートランプや『ヅオーグ』編集長アナーウィンター、社交界の花形で画家のアンーデュオンなど、年季の入ったファッション愛好家もいる。明らかにカメラに向かつてポーズをとっている人あり、不意打ちを食らう人あり。後者によくあるのが、マンハッタンつ子お気に入りの屋外での娯楽、すなわち携帯電話でのおしゃべりに夢中になっているところをパチリとやられるパターンだ。一回の記事に十分な数を撮りためるため、長い時にはひと月も歩道で網を張り続けるカニンガム。出かける際には、決してある特定のトレンドをターゲットとして思い描いているわけではないと言う。二〇〇一年スプリングーファッションウィークの期間中のこと。彼の鋭いレンズが、ショー会場の外にいた私の元同僚をとらえた。キュートなメタルースクッド付きハンドバッグが目を引いたのだ。あれほど写真写りの悪い彼女を見たことはなかったけれど、それでも本人にとっては「『ニューヨークータイムズ』に載るとは、なかなかいいバッグの趣味してるね」と言われているような嬉しい写真であることに変わりなかった。「街角」スナップの被写体の多くが、掲載されることを誇りに思っている。某婦人服メーカーの広報担当ディレクターであるパトリックーマクドナルドなどは、少なくともコー回は撮られている。自分の写真の切抜きをすべて集めているマクドナルドは、二〇〇〇年に『ニューヨーク』誌にこう語っている。「友達から君が出てないかと思って、ハンプトンズから帰るとすぐに『スタイル』面を見るんだなんて言われるんですよ」。