栄養素がどうやって目的の場所に到達できるのか、皆さんは疑問に思ったことはありませんか。血液中や細胞の中を気ままにさまよっていて、偶然に出会った細胞や細胞の中の器官(核やミトコンドリアなど)に入り込んで仕事をするわけではありません。第一、必要のない栄養素は、細胞の中や細胞内器官の中に入れません。細胞や細胞内器官は膜に包まれています。この膜がちょうど門番の役目をしていて、必要な栄養素しか入れないようにしているのです。どの栄養素が中に入れて、どこに向かっていくのかということは、実は既に決められていることだったのです。どういう仕組みで栄養素が正確に仕事場にたどり着けるようになっているかについて明らかにした研究が、1999年度のノーベル賞を獲得したのでした。1999年度の医学生理学部門でノーベル賞を獲得したのは、まさにこの配達の仕組みについての研究でした。細胞・分子生物学者ギュンター・ブローベル博士の研究です。ブローベル博士は、細胞の中で新たにつくられたタンパク質には、目的とする場所にたどり着くためのシグナル(信号)が付いているということを明らかにしました。シグナルには行き先や役割によっていくつもの種類があります。あるシグナルは、ある細胞内器官(核やミトコンドリアなど)の膜にたどり着き、その膜を通過して中に入り込むための暗号のようなものです。この暗号は、「開けゴマ」のような暗号で、その暗号で固く閉ざされていた膜のドアが開くのです。またあるシグナルは、迷わず目的地に行くための宛名の書かれた住所札のようなものだと考えるといいでしょう。もう少し詳しくブローベルの研究を見てみましょう。