最近、肌のみならず、歯も美白しようという意識が高まっている。雑貨屋さんにも通販カタログにも、歯の美白グッズが並んでいる。たしかに歯が汚いと写真映りも良くないし、どことなく貧相な感じがするものだ。顔の作りは多少悪くても、白く粒ぞろいの歯の与える好印象というものは、侮れないものがある。が、このような美意識は、ここ千年の日本の歴史からいうと、実はごく最近のもの。むしろ昔は、歯が黒いほうが美しくて色っぽく、時代によっては育ちの良い証拠という認識さえあった。今から八百年近く前にできた『平家物語』には、源平の戦乱が描かれているが、源氏が平家の“大将”を見分ける時、その歯が黒いか黒くないか、つまりお歯黒をしていたか否かで判断していたという記述がある。たとえば平清盛の弟の薩摩守忠度(ちなみに昔の人は、彼の名から乗り物にただで乗ることを「薩摩守」と言った)は、「私は味方だ」と偽って敵陣を通り過ぎようとした。
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