イノベーションに向かって動く

2011.06.09

照明に灯油が利用されることによって石油採掘業は急速に成長し、同時にランプに用いるホヤを製造するガラス製造業も発達していった。前途洋々と思われた石油産業だが、ガス灯の普及や電球の普及によって照明用の燃料市場が失われ、しだいに衰退していった。石油というシースはあっても市場のニーズがなくなってしまった。石油産業は石炭産業に負けたのである。石油産業が復活するのは、20世紀に入ってガソリンエンジンを使った自勁車が普及するようになってからのことである。石油産業を19世紀末に衰退させた石炭産業は20世紀前半、エネルギー源として、また石炭化学の著しい発展によって、全盛期を誇った。しかし、華やかな時代は長くは続かなかった。20吐紀も半ばになると、高効率のエネルギー源である石油と、多様な物質を高効率でつくりだす石油化学を抱える石油産業の隆盛によって、石炭産業が衰退していったことは記憶に新しい。しかし、21世紀の今日、石油資源の枯渇が近い将来予想されるに至って、再び石炭資源の復活が試みられている。その時代の基幹となる技術や産業は、永遠のものではない。あらゆるものはつねに陳腐化の傷を抱えているが、同時に、新たな技術や産業をつくりだすイノベーションへの芽をも秘めている。それに気づくかどうか、気づいたうえで認識するかどうか、認識したうえでイノベーションに向かって動くかどうか、それが重要である。